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猫の食事

  • nekonobyouin
  • 2021年4月5日
  • 読了時間: 6分

更新日:3月27日


当院では、ウェットフード中心の食事を勧めています。ウェットフードとは、缶詰やパウチなどの密閉容器に入って、水分を80%程度含んでいるフードを、まとめてウェットフードといいます。缶詰フードのことと思ってください。

どうしてウェットフードの方が良いかと言えば、ウェットフードには70%以上の水分が含まれているからです。一方、ドライフードはほとんど水分を含みません。もともと猫は水を飲む動物ではありません。砂漠地方に住むリビアヤマネコが祖先と言われています。ネズミなどの小動物を食べていました。ネズミは栄養学的に70%以上が水分なので、無理に砂漠の地で水を探さなくても、なんとかその水分でもやっていける身体のつくりになっているのです。猫の尿は濃くて臭いのも、少量の水分で老廃物を排出している結果なのです。そのため猫の腎臓は尿を濃くて水分を無駄にしないように、日頃からすごく頑張っているのです。

「ウチの猫は、ドライフード食べてるけど水いっぱい飲むから大丈夫!」という飼い主さんもいますが、1日に必要な水分は150㏄~200ccと言われています。測ってみるとそこまでは飲めてないことが多いです。ドライフードを食べることで体は脱水気味になるので、それを補おうと、もともと水を飲まない猫が水を飲むのでしょう。それを見て、飼い主さんはうちの猫は水をよく飲むと思い込むのです。中には一日に200㏄以上の水を飲む猫がいます。その場合は、水が好きというより、糖尿病や腎臓病を疑った方が良いでしょう。

ウエットフードは必要量に近い水分を含んでいますのでウエットフードを食べることで水分の補給もできるわけですが、ドライフードは食べると体内の水分を吸い取ります。ドライフードを食べた後に嘔吐すると、こんなにたくさん食べたのかと思うほど、大量に吐くことがあります。ドライフードが胃の中で水分を吸収して膨らんでいるのです。


ウエットフードには欠点もあります。ドライフードに比べて、猫が好まないことです。ドライフードは匂いをつけたり、添加物を加えたりと、加工がしやすいため、最近の技術によりおいしく作られています(だから猫は肥満になりやすい)。一方、ウェットフードは自然の状態に近くあまり加工していないため、おいしさでは負けてしまいます。子猫の頃からドライフードばかり食べさせていた猫に、ウェットフードがよいからと試しても、なかなか食べてくれないことがあります。ウェットフードのもう一つの欠点は、飼い主さんの仕事が増えることです。ドライフードは袋から出してぱらぱらと食器にあげて終わりですが、ウェットフードは、残したフードをそのままにしておくと腐るので、食べ終わったら残ったフードを片付けて食器を洗います。また、缶の中に残ったフードは冷蔵庫に入れておき、次に使う時には、レンジで軽くチンをして35℃~40℃の猫の好む温度にする必要があります。



ラベルを見れば、総合栄養食と一般食があり、総合栄養食はそのフードと水だけで栄養が十分足りるフードであり、一般食は総合栄養食と共に与えてくださいというフードです。ドライフード(総合栄養食)と併用するのなら、一般食で問題ないです。ただし併用するドライフードは良質なものを選ぶべきです。パッケージによいことばかり書いてあるフードも多く選ぶのが大変です。当院ではロイヤルカナンのニュータードケアとスキンアンドコートを勧めています。ウェットフードとドライフードを併用する時も、ドライフードは1日20g以下にします(20gであれば80キロカロリー以下となり、一日のカロリー量の半分以下となる)。

ウエットフードの方が体によいということは以前から言われていることではあるものの、どうして猫の病院ではこれほど強くお勧めしているかといえば、自分の猫がドライフードを食べていて腎臓結石になったからです。その猫はドライフードの中では、良いといわれているものを食べていました。病気予防には最適なフードのはずなのに尿結石ができたことから、ドライフードの限界を知ることになりました。その後は自分の猫にはウェットフード中心で与えるようにして、飼い主さんにもウェットフードを勧めるようにしています。


食事の回数についてです。

犬は1日2回の食事で十分なので、ペットショップで買った猫は1日2回と指導されていることがあります。できれば一日に5,6回に分けてあげます。嘔吐が多い猫は食事を1日6回に分けるだけで吐かなくなることがあります。1日に1,2回大きな獲物をみんなで狩りお腹いっぱい食べる犬とは異なり、猫の胃はネズミを食べるのに、ちょうど良い大きさの胃ということなのでしょう。1日5,6回の食事は野生の時の猫の食生活に近いのです。

1日5.6回と言うと、大変に思えますが、起きて一回、出かける前に一回、夕方帰宅して一回、食事時に一回、寝る前に一回で十分です。お昼にもう一回あげることができれば、最高です。

自動給餌器はドライフードしか使えないものの、長時間人が不在になる家庭では便利です。ただし給餌器のグラム数が当てにならないことがあり、どんどん体重が増えていく!ということもあります。


食事の量についてです。「パッケージに書いてある食事量を与えているのに、どんどん太ってくるのです。どうしてでしょう?」

よくある質問です。理想体重が4㎏の体形の猫なのに、5㎏になったからといって、パッケージの食事量の5㎏のところに書いている量を与え、6㎏になったからといってパッケージの食事量の6㎏のところに書いてあるところの量を与えていては、日に日に太るばかりです。私たちが太るたびにご飯の量を増やしていくのと同じです。それは太ります。その猫の体形に合った理想体重のところに書いてある量を与えればよいのです。

安静時の必要なカロリー量は、体重×30+70で求めることができます。理想体重が4㎏の猫であれば、4×30+70=190となり、安静時の必要なカロリーは190㎉となります。ダイエット中であればこの安静時のカロリーに0.8を掛けます。去勢避妊した猫であれば1.2を掛け、未去勢未避妊であれば1.4を掛けます。

大切なのは、計算で求めたカロリー量は、単なる目安でしかないということです。私たちは自分の食事量はどうやって決めているでしょう。自分の体重は60㎏だからと、計算している人はいないはずです。体重計に乗り、62㎏になったら食事量を減らし、58㎏になったらもう少し食べてよいのかと、自分を甘やかす。という感じではないでしょうか。猫も同じです。ペット用の体重も通販で数千円ほどで買えるので、定期的に猫の体重を測ることが理想です。猫を抱っこして人用の体重計で測る方がいますが、人の体重計では50g単位で測ることはできないため、自分の体重の反省会はできますが猫の体重まではわかりません。猫の正確な体重を測ることで、少し体重が増えたから、1日200㎉にしていたけど、190㎉にしようという調節ができるのです。

ただ、実際には、ドライフードを食べているから太るのであって、ウェットフード中心の食事ではそれほど過度の太り過ぎになることはありません。ドライフードは1gで3.5~4㎉ありますが、ウェットフードは1g当たり1㎉以下です。1回30から40g与えます。猫が本来食べていたはずの小動物がそのくらいの大きさなのです。それを1日5,6回与えます。ウェットフードの中にはカロリーがかなり低いものもあるので、そのようなフードはもう少し多く与えます。それぞれのフードのカロリーは必ずパッケージに書いてありますのでチェックしてみてください。

 
 
 

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